長期優良住宅の申請をして後悔しない人と後悔する人の3つのポイント


長期優良住宅は、住宅を長く良い状態で住み続けられると行政庁に認定された住宅のことで、申請して認定されることで補助金や減税、住宅ローン控除といったメリットを受けることができます。

 

しかし、すべての住宅に必要な申請制度ではなく、建てた家に家にずっと住み続ける方や2000万円以下のローコスト住宅を建てる方、地震保険に加入しない方はメリットがほとんどない上に、申請費用や建築費用が高くなって後悔する可能性があります。

 

実際に新築戸建てで長期優良住宅で認定を得ている方は、2022年国交省の発表によると27.7%しかいないので必須ではないことが分かります。今回は長期優良住宅を申請して後悔しない方と後悔する方を3つのポイントに絞って紹介します。

 

 

長期優良住宅とは

行政庁に認定されると節税できる制度

長期優良住宅に認定されると、節税できる制度が2つあります。

 

1つ目は住宅ローン減税制度です。認定された長期優良住宅の場合、一般住宅の控除額3,000万円よりも2,000万円高い5,000万円の控除対象限度額が適用されます。さらに、13年間所得税・住民税の控除が受けられます。(2023年7月時点)

 

長期優良住宅を自己資金で建てる場合は2つ目の投資型減税制度が利用できます。投資型減税制度は長期優良住宅に適用される所得税の優遇措置で、標準的な性能強化費用相当額の上限が650万円となり、性能強化費用相当額の10%を建築年の所得税額から控除する制度です。ただし、住宅ローン減税制度との併用はできません。

 

標準的な性能強化費用相当額とは長期優良住宅の認定にかかわる、住宅の耐久性、耐震性、省エネ性能などの項目を満たすために必要な平米当たりの単価を定め、認定優良住宅の床面積を掛け算した金額のことです。

 

長期優良住宅の認定は毎年2割強

新築や既存住宅の増築・改築が対象で、累計135万戸以上が長期優良住宅に認定されています。長期優良住宅に認定する目的は、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換です。

 

長期優良住宅の認定基準

長期優良住宅の認定基準は複数の項目で構成されています。基準の1つとして、家族が代々住み続けられるような劣化対策を求められます。たとえば、耐用年数が短い配管などの取り替えをしやすくする必要があります。さらに、建物の定期的な点検や補修が行われる「維持保全計画」も認定基準となっています。

 

他にも、大地震に耐える「耐震性」や、高性能断熱材を取り入れた「省エネルギー対策」も認定基準です。

 

長期優良住宅の認定で得られるメリット(2023年7月時点)

地域型住宅グリーン化事業の補助金を得られる

長期優良住宅を建てると、地域型住宅グリーン化事業の「長寿命化」に関わる補助金が受けられることがあり、最大135万円まで支援が受けられます。また、地元の木材を使用すると、加算金が支給されることもあります。

 

国の支援事業である地域型住宅グリーン化事業は、環境に優しく、省エネ性や耐久性に優れた木造住宅の整備を後押しすることを目的としています。

参照元:地域型住宅グリーン化事業

 

住宅ローンの借り入れ金利を引下げられる

たとえば「フラット35S」という長期固定金利の住宅ローンを利用する場合、長期優良住宅だと借り入れ金利を最初の5年間で0.5%、6年~10年目で0.25%引下げられます。また、住宅ローンの返済期間が50年の「フラット50」というローンも組むことができます。

 

住宅ローン控除で所得税を減らせる

長期優良住宅を購入するときには、住宅ローン控除という税制上の特典があります。所得税や住民税から一定額を差し引くことができる制度です。最大13年間、住宅ローンの残高の0.7%(控除限度額35万円)が控除されるため、節税効果を実感できます。

 

たとえば、2023年に新築の長期優良住宅に入居した場合、最大で1年あたり35万円、算出方法は年末時点の住宅ローン残高の0.7%を計算し、所得税や住民税から計算した金額を控除できます。

参照元:国土交通省

 

登録免許税の税率を引き下げられる

長期優良住宅を建てる際や購入するときには、所有権の保存登記や所有権の移転登記にかかる登録免許税の税率が引き下げられる利点があります。一般住宅では、保存登記の税率が0.15%、移転登記が0.3%です。しかし、長期優良住宅であれば、保存登記が0.1%、移転登記が戸建ては0.2%、マンションは0.1%と税率が下がります。減税措置は、2024年3月31日までの取得が対象です。

 

たとえば、住宅の評価額が5000万円だった場合、一般の保存登記にかかる登録免許税は5000万円×0.15%=7万5000円になります。しかし、長期優良住宅の場合は、5000万円×0.1%=5万円となり、減税が適用されることで2万5千円の節税ができます。

参照元:財務省

 

地震保険料が安くなる

長期優良住宅は地震保険料が30%割引になります。長期優良住宅と認められるには耐震性能を表す耐震等級2を満たす必要があり、耐震等級2の住宅は耐震等級割引30%が適用されるためです。毎年の地震保険料に割引が適用されるため、たとえば年間地震保険料35,000円を35年間払い続けるとすると割引総額は367,500円になります。

参照元:東京海上日動

 

減額される固定資産税の金額が多くなる

固定資産税の減額期間が一般住宅より2年長くなるので、減額される固定資産税の金額が多くなります。

 

減額内容は税額の2分の1(1戸あたり120平方メートル分までを限度)で、一般住宅は新築から3年間、長期優良住宅は新築から5年間適用されます。

 

具体的には住宅評価額1,000万円の住宅の場合、固定資産税の税率は1.4%なので固定資産税は14万円です。長期優良住宅の場合、5年間は14万円が最大で7万円になります。6年目からは14万円になります。

参照元:国土交通省

 

長期優良住宅の申請で生じるデメリット

建築費用が増える

長期優良住宅は性能を求めるあまり建築費用が増えます。また近年の建設工事費の上昇によりそもそもの建築費も増加しています。たとえば、2013年以降、建設工事費は右肩上がりに推移し、10年間で1.2倍に膨らんでいます。資材の高騰や人件費の上昇が主な原因です。

 

申請費用がかかる

各自治体の申請手続きや審査のための費用は5~6万円程度です。また、家を建てる会社や工務店に申請書類を作成してもらう場合、書類作成手数料を考えると申請費用の合計は20~30万円程度になります。

 

また、申請には時間もかかるため一般住宅とくらべて着工までに時間がかかります。長期優良住宅として認定されるために、自治体の審査を受けて認定を得る必要があるためです。

 

建築スケジュールが長くなる

長期優良住宅を建てるときは建築スケジュールが長くなることがあります。長期優良住宅の条件を満たす住宅の設備や仕様の細かな決定には、通常2~3ヶ月かかります。

 

建築スケジュールが遅れないために、スケジュールの進行を密にチェックし、必要に応じてハウスメーカーや工務店とコミュニケーションを取ることが大切です。

 

長期の定期点検・修理費用がかかる

長期優良住宅は資材や設備が高品質で耐久性がありますが耐久性を維持する分、点検・修理費用も長期にわたってかかります。長期優良住宅は入居後も認定を維持するために、定期的な点検が必要です。

 

点検時期の間隔や必要な期間は、維持保全計画によって定められており、30年以上の期間で、10年以内の間隔で実施することが求められます。定期点検・修理費用は、住宅を安全な状態に保つための投資とも言えますが、経済的負担は避けられません。

 

また、維持保全を怠ったり、改善命令に違反すると、長期優良住宅の認定が取り消されたり、補助金や税金の優遇措置が無効になって金額の返還を求められることがあります。

 

間取りが自由に設計できないことがある

長期優良住宅では、間取りを自由に設計できないと言われています。建築会社が一定の基準や制度を満たすことが求められるため、すべての希望や要望に応えることがむずかしいです。

 

特に地元の中小工務店で建築する場合、国からの補助金を受けるために特定のルールや条件に沿った家づくりが求められることが多いため、自由な間取りが実現できないケースが出てくることがあります。

 

しかし、最近ではハウスメーカーや工務店も、企画商品として間取りや設備をいくつかの選択肢から組み合わせることができる自由設計のプランを提案しています。

 

 

長期優良住宅を申請しなくても後悔しない方とその理由

ずっとその家に住み続ける方が申請しなくても後悔しない理由

ずっと住み続けるとなると点検・修理費用で差が出てくるため、長期優良住宅の申請をしなくてよかったとの意見があります。

 

もし仮に長期優良住宅に住み続けた場合、認定を維持するために業者に依頼する点検・修理費用はかかり続ける一方で、一般住宅に住み続けた場合は自分で点検・修理できる部分は自分でおこない、業者に任せるべき部分は業者に任せることで点検・修理費用をおさえられます。

 

フラット35で借り入れをしない方が申請しなくても後悔しない理由

フラット35以外の住宅ローン利用は長期優良住宅の優遇措置が適用されないので、長期優良住宅の申請をしなくてよかったとの意見があります。

 

住宅ローンによる所得税の控除は長期優良住宅で優遇されますが、住宅ローンの優遇措置はフラット35のみです。銀行の住宅ローンを利用する場合は一般住宅でも長期優良住宅でも商品内容はかわらないため、勘違いのないようにしましょう。

 

長期優良住宅の仕様で住宅を建てる方が申請しなくても後悔しない理由

長期優良住宅に認定を受けなくても、長期優良住宅と認められるために必要な性能がある住宅は一般住宅でも建てられます。長期優良住宅の認定は考えていないものの長期優良住宅に該当するぐらい高性能な仕様で家を建てた方にとっては、手間や費用がかかるため、長期優良住宅の申請をしなくてよかったとの意見があります。

 

申請までに時間がかかり、着工が遅れる懸念や、申請料及び建った後の維持点検・修理費用を考えると長期優良住宅にする必要性を感じない方もいます。

 

所得2000万円以上の方が住宅を建てるのに申請しなくても後悔しない理由

所得2000万円以上の人は住宅ローン控除の恩恵をうけられないため、長期優良住宅による住宅ローン控除の優遇も受けられません。

 

所得2000万円以上の方が節税目的で長期優良住宅にするメリットは薄いため、長期優良住宅の申請をしなくてよかったとの意見があります。

 

長期優良住宅を申請をしないと後悔する方とその理由

2000万円以上の住宅を建てる人が申請しないと後悔する理由

所得2000万円未満の方は住宅ローン控除の恩恵を受けられます。また、長期優良住宅による住宅ローン控除の優遇も受けられるため節税に繋がります。節税目的で長期優良住宅の申請をして良かったとの意見があります。

 

フラット35で借り入れする方が申請しないと後悔する理由

長期優良住宅を購入して住宅ローンのフラット35を利用する方にとってはローン金利が優遇される点は魅力的です。フラット35は長期固定金利の住宅ローンで、長期優良住宅を対象に金利がさらに低く設定されています。

 

さらに、フラット35Sという特別なプランに加入できれば、借り入れ金利がさらに低くなります。もし仮に長期優良住宅を売却するときも優遇された金利を買主に引き継ぐことができるため、高値で売りやすくなります。

 

地震保険に加入する方が申請しないと後悔する理由

長期優良住宅は耐震等級2を満たしているため、地震保険料が30%割引されます。長期優良住宅を購入して地震保険に入る方は地震保険に加入しましょう。年間地震保険料30%割引が35年間続くと考えると魅力的です。

 

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